case078 フレックスタイム制導入に当たっての注意点
フレックスタイム制導入に当たっての注意点
Q:相談内容
フレックスタイム制導入に当たっての注意点を教えてください。
A:回答
フレックスタイム制の概要、メリットとデメリット、導入時のポイントは以下のとおりです。
●フレックスタイム制とは
フレックスタイム制は、一定の期間についてあらかじめ定めた総労働時間の範囲内で、労働者が日々の始業・終業時刻、労働時間を自ら決めることのできる制度です。労働者は仕事と生活の調和を図りながら効率的に働くことができます。(主に、厚生労働省「フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き」より引用しています。以下同様)
例えば、1カ月の労働時間が160時間と定められていた場合、1カ月間の労働時間の合計が160時間になれば、1日10時間働く日や、5時間働く日があってもよい。
ただし、企業によっては「コアタイム」(労働者が1日のうちで必ず働かなければならない時間帯)、その前後数時間を「フレキシブルタイム」(労働者が自らの選択によって労働時間(出退勤時間)を決定することができる時間帯)を設けています。
・コアタイムは、必ず設けなければならないものではありませんが、これを設ける場合には、その時間帯の開始・終了の時刻を協定で定める必要があります。
・コアタイムの時間帯は協定で自由に定めることができ、
コアタイムを設ける日と設けない日がある
日によって時間帯が異なる
といったことも可能です。
・なお、コアタイムを設けずに、実質的に出勤日も労働者が自由に決められることとする場合にも、所定休日は予め定めておく必要があります。
こうしたコアタイムのない働き方は「スーパーフレックスタイム制」と呼ばれています。
コアタイムの目的
労働者同士のコミュニケーションや情報共有を円滑にするため
全員がそろう時間帯を設けて、ミーティングや取引先との商談などを行うため
・フレキシブルタイム中に勤務の中抜けをすることも可能です。
・フレキシブルタイムも必ず設けなければならないものではありませんが、これを設ける場合には、その時間帯の開始・終了の時刻を協定で定める必要があります。
・フレキシブルタイムの時間帯も協定で自由に定めることができます。
●フレックスタイム制のメリット
・フレックスタイム制のもとでは、あらかじめ働く時間の総量(総労働時間)を決めた上で、日々の出退勤時刻や働く長さを労働者が自由に決定することができます。
・働く人のワークライフバランスが取りやすくなります。日々の都合に合わせて、時間という限られた資源をプライベートと仕事に自由に配分することができるため、プライベートと仕事とのバランスがとりやすくなります。
・フレックスタイム制の導入によって、労働時間を効率的に配分することが可能となり、労働生産性の向上が期待できます。また、仕事と生活の調和を図りやすい職場となることによって、労働者に長く職場に定着してもらえるようになるなど、使用者にとってもメリットがあります。
他にも、例えばこんなメリットがあります。
・共働きで子育てをする夫婦の場合、夫婦ともにフレックスタイム制を活用して、保育園の送り迎えを日替わりで分担しています。
・資格取得を目指して頑張っている人の場合
毎週、月・水・金は資格取得のために社会人大学に通うために、早く帰っています。
その分、火・木は多めに働いて取り返しています。
・通勤ラッシュが苦痛な人の場合、満員電車通勤は会社に着く前にヘトヘト。勤務時間をずらすことで、通勤ラッシュを避けることができます。また、予定があって早く帰りたい日には、通勤ラッシュより前に出勤することができます
・平日の昼にしか開いていない役所や銀行に行って手続きをしたり、通院したりすることができます
・個人が効率的に時間配分を行なうことで、残業の軽減につながる
・働き方に自由性があるため、優秀な人材の採用や定着の向上につながる
・節電対策のひとつとして利用できる
●フレックスタイム制のデメリット
・取引会社や他部門との関係等で、導入できる職種が限られてしまう。
・自己管理ができない従業員が多い職場では、時間にルーズな働き方を助長してしまう
・顔を合わせる機会が少なくなる
・働く時間帯がバラバラで、プロジェクトにチームで取り組む場合に、チームの力を集約しにくい
・チームコミュニケーションが非同期になるため、迅速なフィードバックや意思決定には不向き
・時間外労働算定の事務処理上の手間も通常の時間外労働の場合に比して大きくなるのが一般的
●導入時のポイント
・導入要件:就業規則等への規定と労使協定の締結が必要です。※
【備考】フレックスタイム制の導入は労働者にとって有利なものといえ、不利益変更には該当しないのが原則です。
・導入に当たっての留意事項①:フレックスタイム制を導入した場合には、時間外労働に関する取り扱いが通常とは異なります。
・導入に当たっての留意事項②:フレックスタイム制を導入した場合には、清算期間における総労働時間と実労働時間との過不足に応じた賃金の支払いが必要です。
・フレックスタイム制の清算期間の上限を3か月に延長されています。
・清算期間が1か月を超える場合でも、繁忙月に偏った労働時間とすることはできません。
・清算期間が1か月を超える場合には、労使協定の届出が必要です。
※労使協定の締結に当たって注意すべきポイント
①対象となる労働者の範囲
②清算期間
③清算期間における総労働時間(清算期間における所定労働時間)
④標準となる1日の労働時間
⑤コアタイム(※任意)
⑥フレキシブルタイム(※任意)
また、以下のようなポイントについて、従業員と管理者が正しく制度を理解・運用すること。
・フレックスタイム制を導入する意義
・コアタイムやフレキシブルタイム
・業務に支障が出ないのか、業務フローを綿密に検証する
・管理者のマネジメント力の向上を図る
・フレックスタイム制を導入しても、予算上は残業代を確保する
●フレックスタイム制における時間外労働についての注意事項
フレックスタイム制のもとでは、清算期間を通じて、法定労働時間の総枠を超えて労働した時間が時間外労働としてカウントされます。
清算期間が1か月を超える場合には、
①1か月ごとに、週平均50時間を超えた労働時間
②清算期間を通じて、法定労働時間の総枠を超えて労働した時間
(※①でカウントした労働時間を除く)
が時間外労働としてカウントされます。
以上