出来高払い報酬

case061 出来高払制について

出来高払制について

Q:相談内容

雇用契約にインセンティブ(出来高払制)を採用した場合の労務管理上守るべきこと、給与(手当等)について教えてほしい。

A:回答

「固定給+歩合給」で実施されるということでしたので、その前提で回答させていただきます。

(1)保障給について

労働基準法第27条では、「出来高払制その他の請負制で使用する労働者については、使用者は、労働時間に応じ一定額の賃金の保障をしなければならない」と定められています。

つまり、労働の成果が無かったとしても、労働時間に応じた一定額の賃金を支払わなければなりません。

これは従業員が実際に勤務していた場合に支払を義務付けられるもので、長期間欠勤をしていたりして、勤務していなかった場合は支払う義務はありません。

賃金に関する労働基準関係法令等について(厚生労働省資料)より

(2)保障給の目安

労働時間に応じて一定額の賃金を保障しなければならないことになっていますが、この保障給の額をいくらにすれば良いかは、労働基準法では特に定められていません。

ただし、通達(昭和22・9・13基発第17号、昭和63・3.14基発第150号・婦発第47号)では、「常に通常の実収賃金と余り隔たらない程度の収入が保障されるように保障給の額を定める」こととされています。具体的には、休業手当が平均賃金の6割以上の支払を義務付けていることから、保障給についても同様に平均賃金の6割が目安とされています。

(3)1時間当たりの保障給

労働基準法により、保障給は労働時間に応じて支払うことになっていますので、労働時間1時間あたりの時間給で定めることが原則とされています。したがって、実際の労働時間に関係なく、1ヶ月について一定額を保障するものは、保障給には当たりません。ただし、保障給の金額を満たすような金額が支払われている場合は、無効とは言えないとされています。その場合は固定給と同じ扱いになります。

(4)固定給と歩合給の割合

労働基準法の規定は、完全出来高払制の場合、あるいは、出来高払給と固定給を組み合わせて支払う場合に適用され、その出来高払の部分に対して保障給を支払う必要があります。

しかし、出来高払給の割合が小さければ、社員の生活に余り影響することはありません。労働基準法の出来高払制に関する規定では、第27条(出来高払制の保障給)では、「出来高払制その他の請負制で使用する労働者については、使用者は、労働時間に応じ一定額の賃金の保障をしなければならない。」としていますが、保障給の額についての規定はありません。ただし、下記の解釈例規から、賃金の構成のうち基本給等の固定給の割合が賃金総額の6割程度以上の場合は、保障給を支払う必要はありません。したがって、固定給の割合を6割以上になるよう設定して下さい。

<解釈例規>

保障給の趣旨として、「本条は労働者の責に基かない事由によって、実収賃金が低下することを防ぐ趣旨であるから、労働者に対し、常に通常の実収賃金と余りへだたらない程度の収入が保障されるように保障給の額を定めるように指導すること。

なお、本条の趣旨は全額請負給に対しての保障給のみならず一部請負給についても基本給を別として、その請負給について保障すべきものであるが、賃金構成からみて 固定給の部分が賃金総額中の大半 ( 概ね六割程度以上)を占めている場合には、本条のいわゆる「請負制で使用する」場合に該当しないと解される。」(法27条、昭和22.9.13発基17号、昭和63.3.14基発150号)

賃金に関する労働基準関係法令等について(厚生労働省資料)より

(5)最低賃金法と出来高払制

出来高払制であっても、最低賃金法は適用されます。最低賃金をクリアしているかどうかの計算方法は、例として、

•固定給が、月額85,000円 

•出来高払給が、月額42,000円 

•1ヶ月の平均所定労働時間が、170時間 

•当月の時間外労働の時間が、30時間 

の場合の計算は以下のとおりです。

1.固定給を1ヶ月の平均所定労働時間で割ると、500円(=85,000円/170時間) 

2.出来高払給を当月の総労働時間で割ると、210円(=42,000円/200時間) 

1.と2.を合計した金額(710円=500円+210円)が1時間当たりの賃金となります。この金額と最低賃金を比較します。

基本給等の固定給は1ヶ月平均所定労働時間で割って計算しますが、出来高払給は総労働時間で割って計算します。つまり、出来高払給は、時間外労働の時間を含めた総労働時間を稼働して上げた成果によって算出されるため、このような計算になります。

(6)出来高払制の割増賃金

東京労働局 しっかりマスター 労働基準法 割増賃金編より

出来高払制の場合であっても、時間外労働をすれば時間外割増賃金,休日労働をすれば休日割増賃金,深夜労働をすれば深夜割増賃金をそれぞれ割増賃金として支払われなければなりません。

割増賃金の算定の基礎とする賃金(基礎賃金)は、その賃金算定期間(賃金締切日がある場合には,賃金締切期間、以下同じ)において出来高払制その他の請負制によって計算された賃金の総額を当該賃金算定期間における総労働時間数で除した金額と規定されています。

なお、時間外勤務手当の割増率は、出来高払制では、時間外勤務の時間も含めた総労働時間を稼働して成果を上げたものですので、1.00分は出来高払給として既に支払っているものと解釈され、残りの0.25分の支払いでよいことになります。休日勤務手当が1.35ではなく、0.35となっているのも同じ理由です。

1.時間外勤務手当=出来高払給×0.25×時間外勤務時間/当月の総労働時間 

2.休日勤務手当=出来高払給×0.35×休日勤務時間/当月の総労働時間 

3.深夜勤務手当=出来高払給×0.25×深夜勤務時間/当月の総労働時間 

(7)出来高払制の保障給との関係

保障給は残業代等の割増賃金計算の基礎賃金となりません。

あくまで保障給と割増賃金計算の基礎賃金は別物です。

(8)年次有給休暇と出来高払制

年次有給休暇を取得した日に対して、出来高払制の社員に追加で賃金を支払う必要があります。

支払う賃金については以下のとおりに算出します。

まずは、出来高払給を当月の総労働時間で割って1時間当たりの金額を算出します。

次に、この金額と1日平均所定労働時間を掛けた金額を追加して支払うことになります。

例えば、当月の総労働時間が200時間で、出来高払給が3万円だったとすると、

1時間当たり150円(=30,000円/200時間)になります。

そして、所定労働時間が1日8時間とすると、年次有給休暇を取得した日1日につき、

1,200円(=150円×8時間)を追加して支払うことになります。

以上

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