労働条件通知書

case063 出来高払制の導入について

出来高払制の導入について

Q:相談内容

出来高払制導入後、基本給等の内容見直しが双方合意であれば可能だと伺いましたが、具体的に最低保証額の算出法や考え方を教えてください。また、合意があれば最低保証額を下回れますか?

また、出来高払制導入時に交わす契約書に一文を添えられるか等、後々トラブルがないように準備したいのでご指南ください。

A:回答

1.最低保証額等に関して

出来高払制は、「固定給(基本給)+歩合給」で実施されます。保障給、割増賃金、年次有給休暇の賃金についてご紹介します。

(1)保障給について

労働基準法第27条では、「出来高払制その他の請負制で使用する労働者については、使用者は、労働時間に応じ一定額の賃金の保障をしなければならない」と定められています。

つまり、成果がゼロだったとしても、労働時間に応じた一定額の賃金を支払われます。

これが「最低保証額」になります。

ただし、これは実際に勤務していた場合に支払われるもので、長期間欠勤をしていたりして、勤務をしていなかった場合は支払われません。

(2)保障給の目安

保障給は、労働時間について平均賃金の6割です。

(3)1時間当たりの保障給

保障給は労働時間に応じて支払われます。

(4)出来高払給の割増賃金

出来高払制の場合であっても,時間外労働をすればこれに対する割増賃金(残業手当・残業代)が,休日労働をすればこれに対する割増賃金(休日手当)が,深夜労働をすればこれに対する割増賃金(深夜手当)が,それぞれ支払われます。

割増賃金の算定の基礎とする賃金(基礎賃金)は、その賃金算定期間(賃金締切日がある場合には,賃金締切期間、通常は1カ月間、以下同じ)において出来高払制その他の請負制によって計算された賃金の総額を当該賃金算定期間における,総労働時間数で除した金額と規定されています。

  1. 時間外勤務手当=出来高払給×0.25×時間外勤務時間/当月の総労働時間 
  2. 休日勤務手当=出来高払給×0.35×休日勤務時間/当月の総労働時間 
  3. 深夜勤務手当=出来高払給×0.25×深夜勤務時間/当月の総労働時間 

なお、基本給については従来通り、1.25倍、1.35倍、0.25倍で計算します。

(5)年次有給休暇と出来高払制

年次有給休暇を取得した日に対して通常の賃金を支払っている場合、出来高払制の社員の賃金は以下のように支払われます。

  1. まずは出来高払給を当月の総労働時間で割って1時間当たりの金額を算出します。
  2. この金額と1日平均所定労働時間を掛けた金額を追加して支払うことになります。

例えば、当月の総労働時間が200時間で、出来高払給が3万円だったとすると、1時間当たり150円(=30,000円/200時間)になります。

そして、所定労働時間が1日8時間とすると、年次有給休暇を取得した日1日につき、1,200円(=150円×8時間)を追加して支払うことになります。

また、基本給部分については、控除されません。

(6)基本給の見直しについて

会社側の都合で減給となる場合には労働条件の不利益変更になるため、原則として本人の同意が必要になります。なお、労働契約法第10条で、「就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるとき、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。」とされています。

したがって、基本給の見直し内容が合理的であるか否かを検討する必要があります。基本給の減給について、たとえば、「基本給」を「基本給」部分と「出来高給」部分に分ける場合、出来高給に最低保証を設けること等で、支給額を一定の水準とする、あるいは、移行期間を設けて、調整給等を支給する、等の激変緩和措置を設けることが妥当だと思います。

2.契約の合意に関しましては、下記の賃金通知書のひな形をご参考ください。

以上

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