裁量労働制

case028 裁量労働制について

裁量労働制について

Q:相談内容

<確認事項>
以下の方について、デザイン業務をメインに行なっていただくのですが、残業代固定5万円にした場合、裁量労働制が適用できるのでしょうか?

○○ ○○
○○年2月5日から採用した社員
職種:デザイナー
基本給:30万円(試用期間3ヵ月間)
3ヵ月後に、基本給30万円+残業代として5万円の合計35万円にします。

A:回答 <結論>

固定残業代とは、一定時間の残業が発生することを前提として割増賃金相当額を給与に組み込んで支払う方法であり、裁量労働制は、あらかじめ「月に○時間は働いたとみなす」労働時間数の定めをすることで、その範囲内の労働時間では残業代や休日出勤手当を発生させない方法です。

裁量労働制に固定残業代を併用することは可能です。
例えば、裁量労働制で、1日9時間の業務であるとみなした場合、
1か月で、約20時間(毎日1時間 × 約20日)の残業が発生することになります。
その時間を固定残業手当として支払うことができます。
なお、裁量労働制を導入することは、労使協定の締結、健康・福祉の確保のための措置、
苦情処理方法の規定などのハードルが高いため、固定残業代のみを適用する方式で対応することを推奨いたします。

解説

まずは、固定残業手当と裁量労働制との違いについて

●固定残業代
固定残業代とは、名称のいかんにかかわらず、一定時間分の時間外労働、休日労働及び深夜労働に対して定額で支払われる割増賃金のことです。定額の割増賃金を支給し、この他には時間外労働等に対する割増賃金を支給しない方法です。たとえば、「営業手当は、月間20時間分の時間外労働に対する割増賃金として支払う。」と規定することを推奨します。なお、「営業手当は、月間20時間分の時間外手当を含む」とか「1日1時間分の時間外労働割増賃金を含めて日給1万円とする」といった定め方も実務上見られますが、明確区分制が論点として浮上するため、日給基本給部分と固定残業1時間分は別費目で支払った方が無用な疑義が生じることなく適切です。

固定残業代を規定する場合は、以下の項目を満たしていなければなりません。
①就業規則、賃金規程、労働契約などで固定残業代の規定を明記する。
②基本給、固定残業代の内訳を明記する(ほかの給与と固定残業代を明確に区別するため)。

また、固定残業代制を採用する場合は、募集要項や求人票などに、次の①~③の内容すべてを明示する必要があります。
① 固定残業代を除いた基本給の額
② 固定残業代に関する労働時間数と金額等の計算方法
③ 固定残業時間を超える時間外労働、休日労働および深夜労働に対して割増賃金を追加で支払う旨

なお、実際の労働時間が就業規則などで定めた残業時間を越えなくても、固定残業代を支払うことになります。また、実際の労働時間が、固定残業代に含まれる時間数を超えたら、超過分の残業代を支払う必要があります。

●裁量労働制

裁量労働制は、業務の遂行方法が大幅に労働者の裁量に委ねられるもので、一定の専門的・裁量的業務に従事する労働者について、労使協定で、労働時間の計算を実労働時間ではなく、一定の労働時間数だけ労働したものとみなした時間によって行うことを認める制度です。

専門的な職種の労働者について労使協定によりみなし時間制を実施する「専門業務型」と、経営の中枢部門で企画・立案・調査・分析業務に従事する労働者に関し、労使委員会の決議によって実施する「企画業務型」の2種類があります。

「専門業務型」は、(1)業務の性質上その遂行方法を労働者の大幅な裁量に委ねる必要性があるため、(2)業務遂行の手段および時間配分につき具体的指示をすることが困難な一定の専門的業務に適用されるものです。

デザイナーは、「専門業務型」を適用できる業務(19業務)のなかの「衣服、室内装飾、工業製品、広告等の新たなデザインを考案する業務」が対象となり得ます。

ただし、この制度を実施するには、労働者の過半数を代表する者と労使協定を締結し、対象業務を特定した上、業務遂行の手段・時間配分の決定等に関して具体的な指示をしないこと、具体的に労働時間としてみなす時間、労働状況に応じて実施する健康・福祉の確保のための措置や苦情処理方法などを定めなければなりません。

協定を締結するにあたっては、裁量労働制の対象となる労働者の意見を聞くことが望ましいとされています。また、この制度に労働契約上の拘束力を持たせるには、労働者の合意や就業規則上の合理的定めなどの根拠が必要となります。

また、協定は、有効期間を定め、労働基準監督署長へ届け出ることが必要です。

なお、裁量労働制は、時間管理も個人の裁量に任せるため、「1日に〇時間働く」という契約ではありません。したがって、遅刻や早退という概念がありません。しかし、「月に○時間は働いたとみなす」という労働時間数の定めが必要です。また、休日は労働者の権利として保障されます。みなし時間を超過して働いた場合や、休日出勤をした場合、使用者は残業代や休日出勤手当が支払わなければなりません。

この制度により労働時間のみなし計算がなされる場合には、労基法上の労働時間規制への違反の有無、あるいは時間外労働についての割増賃金の額は、あくまでもみなし時間を基準に判断します。ただし、このようなみなし時間制は、労働時間の計算に関してのみ用いられるもので、みなしにより計算された時間が法定労働時間を超えたり深夜業になったりする場合には、割増賃金が必要となります。また、休憩や休日に関する規定も適用されます。

以上

ピックアップ記事

ピックアップ記事がありません。

関連記事

  • 労務相談事例
case029 裁量労働制に関して

Q:相談内容  弊社の○○テクニカルセンターという部署では専門型裁量労働制を導入 […]

  • 労務相談事例
case013 休職期間満了に伴う自然退職

Q:相談内容 休職期間満了に伴う自然退職は自己都合退職となりますか? A:結論 […]

  • 労務相談事例
case078 フレックスタイム制導入に当たっての注意点

フレックスタイム制導入に当たっての注意点 Q:相談内容 フレックスタイム制導入に […]