case004 退職金の支給要件の変更について

Q:相談内容

退職金の支給要件の変更について、現在、入社後0年であっても退職金を支給する規定となっています。これを在職3年以上に変更しようと考えております。
何か問題はあるでしょうか?

A:結論 

 この事例では、退職金の性格に鑑みて、勤務歴0年でも支給することは筋が通らないように思いますが、退職金の支給条件として、明確に定めてありますので、勤務3年以上と変更するのは、労働条件の不利益変更に該当します。

【ご参考】変更時点において在職3年未満の従業員がいない場合には「不利益変更」とはなりません。想定事例の変更に踏み切るのであれば、3年未満の従業員がいないときに踏み切るのが得策です。

不利益変更を行う場合は、労働者の個別同意、あるいは、労働組合又は労働者代表との協議を通じて、従業員との変更の同意をとり、合理的な内容といえる変更であることが必要です。

解説

退職金の支給は企業の任意です。しかし、就業規則で退職金制度を設けた場合は労働基準法上の賃金に該当し、支払いの義務が発生します。退職金制度については、就業規則において適用される従業員の範囲、支給要件、額の計算および支払の方法、支払の時期などを記載しなくてはなりません。一度定めた支給条件等の引き下げ変更については、労働条件の不利益変更に当たる事になります。
不利益変更に当たっては、原則としては労働者の個別同意を得ること、あるいは、労働組合又は労働者代表との協議を通じて、従業員との変更の同意をとり、規定の変更することが必要です。従業員との同意については経過措置なども十分に検討し、従業員に納得してもらえるよう、話し合いの機会を持つことが重要です。
一般的に、不利益変更が認められるためには、次のような合理性の判断要件を満たす必要があります。
①従業員が受ける不利益の程度
②変更の必要性
③変更後の就業規則の内容の相当性
④労働組合等との交渉の状況
⑤その他就業規則に変更に係わる事情

ご相談の内容は、「不利益であっても軽微であれば問題ないとされるもの」と判断できます。
なお、規程の変更については今回のように一定の勤続年数以上の者を対象とするなど、一部の従業員を適用範囲とする場合、適用される従業員の範囲を明確に書かれていなければ、基本的にはすべての従業員に支払わなくてはなりません。

退職金支給要件については勤続年数を3年以上としている企業が多く、その間に確定拠出年金等の運用により従業員の退職金支給額を増やす事や不測の事態に備えた退職金の原資の確保においても、規程の変更は有効である場合が多いと考えます。

さらに、仮に在職3年未満の労働者が在籍していなければ、実際に不利益を被る労働者がいないことから敢えて同意を得なくとも労使間でのトラブル発生となる可能性は殆どないでしょう。そうした場合ですと、通常の就業規則(退職金規程)改正の措置を採られることで問題はないものといえます。

ちなみに現在の趨勢からは、退職金制度そのものが廃止や確定拠出年金化等、見直す傾向にあります。大きな変更となりますが、経営方針そのもの、人事政策の大きな転換を考えるのであれば、ひとつの機会かも知れません。

以上

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