解雇通知書

case018 試用期間中の解雇について

試用期間中の解雇について

Q:相談内容

試用期間中で、やる気が見られず、信用して仕事を任せられない社員を解雇したいのですが、可能ですか。また、どのようにすればよいですか。

A:回答 <結論>

(埼玉県の労働相談のページより一部引用)

試用期間中の解雇については、通常の解雇よりも広い範囲で解雇の自由が認められていますが、合理的な理由もなく恣意的に解雇することはできません。単に「やる気が見られない」「信用して仕事を任せられない」という抽象的な理由は、客観的に見て合理的な理由とは考えられません。

試用期間だからと言って、安易に解雇してしまうと、訴訟などに発展する危険性があります。

また、使用者には、解雇理由が就業規則や労働契約等に基づいたものかなどの納得のいく説明が求められます。

<解説>

試用期間の趣旨・目的により、業務への適性や勤務態度などを観察し、能力不足や勤務態度の悪さなどを理由に解雇しやすくもなります。しかし、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であることが必要なことは、通常の解雇と変わりません。つまり、採用決定後の調査結果や試用期間中の勤務状態などにより、会社が当初知ることができず、また、知ることが期待できないような事実を知ったために、その者を引き続き雇用することが適当でないと判断することに合理性がある場合に限られます。

もしも解雇無効になれば、紛争中不就労だった期間の賃金請求や損害賠償請求も認められる可能性が生じます。

解雇を検討する場合には、以下のことについて十分検討する必要があります。

・試用期間を設ける場合には適切に運用されているか

・正当な理由があっての解雇なのか

・解雇を行う場合は適正な手続きでの解雇なのか

関連事項

解雇予告手当について

試用期間中といえども、14日を超えて雇用している場合は、使用者は30日前までに解雇予告をするか、平均賃金の30日分以上の解雇予告手当を支払う必要があります(労働基準法第20条、21条)。

解雇理由証明書の請求について

解雇予告がされた日から退職の日までの間に、労働者から、解雇の理由について、証明書の発行を請求された場合、使用者は遅滞なく証明書を交付しなければなりません。この証明書には、労働者の請求しない事項を記入してはならないことが労働基準法に定められています(労働基準法第22条第2・第3項)。

試用期間中の解雇の相当性が認められた事由

過去の判例で、試用期間中の解雇の相当性が認められた事由には以下のものがあります。

なお、その程度や回数、会社側がきちんと指導したかなどによって、客観的に合理的な理由があるか、社会通念上相当かを判断することになります。

·成績不良·能力不足

試用期間の途中で能力不足を理由にした解雇は不当解雇になる可能性が非常に高いです。

能力が足りないからといって安易に解雇はできません。特に、即戦力として具体的能力を期待されて雇用された従業員ではない場合(例えば、新卒採用者など)には、試用期間中の能力不足解雇が有効であると立証するハードルは高いものであると言えます。会社には、能力が不足している社員に対して、適切な指導・教育を行う責任があります。

また、本採用を拒否する基準を明確にしておくことが求められます。

·欠勤·遅刻·早退が多い

試用期間中の欠勤や遅刻など、規律を守らないことは本採用拒否の正当な理由になりえますが、1度や2度の遅刻・欠勤では解雇が認めらない可能性が高いです。再三注意・指導したが改善されないためということであれば、解雇が認められる可能性が高くなります。

·協調性がない·指示に従わない

上司からの指示に反発したり、他の社員とトラブルになるような勤務態度について、再三注意・指導をしても行動を改めない場合は、正当な解雇事由なりえます。逆に、軽微な反抗をしたり言葉遣いが悪い程度では、解雇理由の正当性は低いと考えられます。

·重大な経歴詐称があった

重大な経歴詐称があった場合は、正当な解雇理由になりえますが、経歴詐称の程度・内容によっては解雇が無効と判断される可能性があります。

重大な経歴詐称としては、「学歴」「職歴」「犯罪歴」、あるいは、必要資格や免許の取得を偽ったため、業務に支障をきたすような場合が相当します。

不当解雇になり得る試用期間中の解雇方法

試用期間中に解雇する場合には、以下の点に注意する必要があります。

·指導や注意など改善の機会を与えない解雇

勤務態度の悪さがあった場合でも、求めている能力よりも低いと判断した場合でも、指導を行ったり、注意して改善を求めたりすることが必要です。なお、この際、指導書やメール等証拠に残る方法で行うことも必要です。

·弁明の機会を与えない解雇

重大な非違行為を理由として懲戒解雇を行う場合には、弁明の機会付与をはじめとる懲戒手続きを不備なく行う必要があります。

·試用開始から14日以上経った後の予告なしの解雇

試用開始から14日以上が経過している場合、30日以上前に解雇予告をする必要があります。雇予告をせずに即日解雇する場合には、平均賃金×30日分の「解雇予告手当」を支払う必要があります。

試用期間中での解雇以外に考えられる対応策

試用期間での解雇は、通常の解雇よりも認められやすいと解されていますが、それでも客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当である必要があります。紛争リスクを考慮すると、解雇以外の以下の方法も検討する必要があります。

·退職勧奨をする

試用期間中に、業務を遂行する能力が足りない、協調性がないなどと判断した場合には、退職を勧める方法もあります。ただし、強制力がありませんので、社員が応じないことはあり得ます。そのため、事案によっては退職に応じる場合には一定の解決金を支払う等、従業員に退職するメリットとなる条件を提示することも実務上行われています。

また、退職には応じない意思を示している従業員に対して、繰り返し退職勧奨すること、退職を強く求める態度は、退職を強要としているとされ、違法行為となる可能性があります。

·試用期間の延長

当初設定した試用期間での判断が難しい場合、以下の条件で試用期間を延長することができる場合があります。ただし、会社の独断で延長を決めてしまうことはできません。

・就業規則や労働契約書に、試用期間を延長する場合がある旨の記載がある

・試用期間の延長に合理的な理由がある

・延長する期間は当初の試用期間に含めて概ね1年以内

以上

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