case068 同一賃金に関する検討
同一賃金に関する検討
■基本給
正社員
日給月給制
(年齢、学歴、技能、経験、実績、職務遂行能力等の諸要素を総合評価のうえ決定する。)
嘱託社員
勤務形態、技能及び経験等を総合勘案して、個別の雇用契約書において決定する。
原則として月給又は時間給とする。
弊社コメント:長澤運輸事件において、
定年再雇用者が定年前の賃金との相違を争った裁判で、業務の内容および業務の責任の程度に相違なしであっても定年前収入の79%程度が容認されています。(基本給は定年前の88%程度でも容認された)
■住宅手当
正社員
①世帯主 月額8,000円
②世帯主以外 月額5,000円
嘱託社員
なし
弊社コメント:長澤運輸事件において、
・住宅手当は住宅費負担の補助(生活費の補助)である。
・正社員は幅広い年代が存在し、生活費補助に相応の理由があり、また、嘱託は年金支給が予定されている
・定年再雇用者について、職務内容等が定年前と同一であっても、不支給は不合理ではない(払う必要なし)と判断されています。
なお、日本郵便事件(東京事件及び大阪事件)各高裁において、契約社員に支給していなかったことが不合理な相違であると判断されている点(最高裁では判断がなされず住宅手当については高裁確定)にご留意ください。
■役付手当
正社員
①部長、店長 月額50,000円
②課長 月額20,000円
③主任 月額 5,000円
嘱託社員
なし
弊社コメント:長澤運輸事件において
正社員のうちから指定された役付者に支給(年功、勤続要素無し)
→ 職務内容等が定年前と同一であっても、
不支給は不合理ではない(払う必要なし)
■輸送手当
正社員
商品配送業務に従事する者に対して支給する。
①輸送手当 月額 7,000円
嘱託社員
なし
弊社コメント:ハマキョウレックス事件において
無事故手当について、安全運転や事故防止の必要性は無期・有期の間に相違はない → 不合理である(払う必要あり)と判断されています。同様の見直しが必要ではないかと思います。
■家族手当
正社員
次の家族を扶養している社員に対して支給する。なお扶養している家族とは従業員と生計を一にし、健康保険上の被保険者となっている家族とする。
①配偶者 月額10,000円
②満22才未満の子1人につき 月額 3,000円
嘱託社員
なし
弊社コメント:長澤運輸事件において
・家族手当は扶養の補助(生活費の補助)である。
・正社員は幅広い年代が存在し、生活費補助に相応の理由があり、また、嘱託は年金支給が予定されている
・定年再雇用者について、職務内容等が定年前と同一であっても、不支給は不合理ではない(払う必要なし)と判断されています。
【ご参考】日本郵便事件(大阪事件)最高裁においても、扶養手当の支給の有無について不合理な相違であると判断されています。
■免許手当
正社員
以下の免許の資格を有する者にして、その職務に従事する場合支給する。
①危険物取扱者免許 月額5000円
嘱託社員
なし
弊社コメント:ハマキョウレックス事件において
無事故手当について、安全運転や事故防止の必要性は無期・有期の間に相違はない → 不合理である(払う必要あり)と判断されています。同様の見直しが必要ではないかと思います。
■職務手当
正社員
職務に応じ、業績等を考慮して支給する。
嘱託社員
なし
弊社コメント:ハマキョウレックス事件において
作業手当について、特定の作業を行う対価としての手当。職務内容等が無期・有期間で異ならないので手当の必要性は両者にあり → 不合理である(払う必要あり)と判断されています。同様の見直しが必要ではないかと思います。
■営業手当
正社員
営業職に就く者に、一定時間分の固定の時間外労働手当として、営業手当を支給する。金額は、業務量等に応じて個別に決定し、雇用契約書に明示する。
嘱託社員
なし
弊社コメント:ハマキョウレックス事件において
作業手当について、特定の作業を行う対価としての手当。職務内容等が無期・有期間で異ならないので手当の必要性は両者にあり → 不合理である(払う必要あり)と判断されています。同様の見直しが必要ではないかと思います。
■通勤手当
正社員
以下のとおり支給する。
① 通勤手当を受ける資格のある者は、原則、本人の住居より就業場所までの直線距離が2㎞を超える者であって、公共交通機関を利用して通勤している者に限る。
② 使用する交通機関は、公共の交通機関とし、社員の住居より就業場所まで会社が認める合理的かつ経済的な経路とする。ただし、通勤経路については会社に届出て承認を得るものとする。
③ 通勤の途中、バスを利用する者については、住居から住居の最寄り駅まで、もしくは就業場所の最寄り駅から就業場所の通勤距離が原則、2㎞を超える場合に限り、1ヶ月の通勤定期代または交通費実費を支給する。
④ 自家用車通勤は、会社の許可を受けた者のみ認められるものとする。自家用車通勤に伴う駐車場代金は自己負担とする。
⑤ 出勤が1日もない場合、通勤手当は支給しない。
⑥ 通勤手当は原則、社員の住居から就業場所までの通勤に要する費用の実費を基本に会社が定めた額を支払う。
(1) 公共交通機関を利用する者
1ヶ月定期代(3ヶ月定期代の3分の1)または、通勤手当の非 課税限度額のうち多い方の金額
(2) 自家用車通勤の許可を受けた者
上記(1)の公共交通機関を利用する者とみなした金額
嘱託社員
以下のとおり支給する。
① 通勤手当を受ける資格のある者は、原則、本人の住居より就業場所までの直線距離が2㎞を超える者であって、公共交通機関を利用して通勤している者に限る。
② 使用する交通機関は、公共の交通機関とし、社員の住居より就業場所まで会社が認める合理的かつ経済的な経路とする。ただし、通勤経路については会社に届出て承認を得るものとする。
③ 通勤の途中、バスを利用する者については、住居から住居の最寄り駅まで、もしくは就業場所の最寄り駅から就業場所の通勤距離が原則、2㎞を超える場合に限り、1ヶ月の通勤定期代または交通費実費を支給する。
④ 自家用車通勤は、会社の許可を受けた者のみ認められるものとする。自家用車通勤に伴う駐車場代金は自己負担とする。
⑤ 出勤が1日もない場合、通勤手当は支給しない。
⑥ 通勤手当は原則、社員の住居から就業場所までの通勤に要する費用の実費を基本に会社が定めた額を支払う。
(1) 公共交通機関を利用する者
1ヶ月定期代(3ヶ月定期代の3分の1)または、通勤手当の非 課税限度額のうち多い方の金額
(2) 自家用車通勤の許可を受けた者
上記(1)の公共交通機関を利用する者とみなした金額
弊社コメント:相違が生じていないため、不合理性はないと思われます。
■賞与
正社員
賞与支給日に在籍する従業員に対して、会社の業績、従業員の勤務成績等を勘案して支給する。
2 原則として夏期賞与は毎年7月、冬期賞与は12月に支給
嘱託社員
原則として支給する。
弊社コメント:記載情報だけで不合理性はないと断定することはできません。
算定方法や金額、当該賞与において正社員人材確保の目的が認定可能なのか、正社員登用の途は確保されているのか、職務内容や変更範囲の相違はどの程度あるのかといった事項が前提として判断されます。
なお、大阪医科薬科大学事件において、正職員に賞与を支給する一方、アルバイト職員に対して賞与を支給しないことが、不合理な待遇差であり労働契約法20条に違反するかどうかが争点となった裁判において、最高裁判決では、不合理な待遇差にはあたらないという判断を示しました。
■退職金
正社員
あり
嘱託社員
原則として支給しない
弊社コメント:定年退職時に支給済みであり、不合理性はないと思われます。
【ご参考】退職金についてメトロコマース事件最高裁判決において、当該事案における契約社員への退職金不支給について不合理な相違ではないと判断しています。その理由として、
・退職金の目的趣旨として正社員人材確保の目的が認定できること
・職務内容及び変更範囲において一定の相違があったこと
・登用制度が労契法20条所定の「その他の事情」として考慮されていること
等があげられています(なお、宇賀裁判官の反対意見も付されています)。
以上