case026 残業時間に関して
残業時間に関して
Q:相談内容
残業時間に関して、下記の場合の問題点と対応方法について、下記の管理で適正ですか?
また、適正でない場合の管理はどうすべきですか?
現状の整理:
(1)就業時間について
【始業終業時刻 】
8:00~17:00
【休憩時間】
10:00~10:15
12:00~13:00
15:00~15:15
【所定労働時間】 7時間30分
(2)勤務管理について
a タイムカード等による打刻はしていない。
b 17:00以降の残業時間については、本人からの自己申告、上長の承認により行っている。(残業代は支払っている)
c 7:30から作業に取り掛かっている場合があるが、残業時間には付けていない。
(日給に含まれていると認識している)
A:回答
・現状の労働条件について、
(1)のbについて、出勤簿、勤怠管理システム等、客観的なデータで記録することを推奨いたします。
(3)のc「7:30から作業に取り掛かっている場合があるが、残業時間には付けていない。
(日給に含まれていると認識している)」件については、
・作業に取り掛かっているのであれば、残業時間には付けてください。
・また、記録することを推奨いたします。
・固定残業手当(何時間分)として雇用契約書に明記してください。
・その他
残業時間の計算の基準単価は、「日給 ÷ 7.5時間 × 1.25」としてください。
・勤怠管理考え方については別紙-1のとおりです。
以上
別紙-1 勤怠管理の考え方
「勤怠管理」とは、企業・組織が所属する従業員の就業状況を把握し、適正に管理することです。管理する項目、1日に何時間働いたか、遅刻はなかったか、有給休暇を取得したかなどです。勤怠管理を怠ると法令違反と判断される可能性があります。企業を守るためにも、勤怠管理の基本を理解する必要があります。勤怠管理を運用する上でとして指針として、厚生労働省が2017年1月に公表したガイドラインがあります。
勤怠管理の対象者
ガイドラインによると、勤怠を管理されるべき者には、すべての従業員が該当します。管理監督者は勤怠管理の対象外となっていましたが、2019年4月の働き方改革関連法の改正に伴い、勤怠管理の対象となりました。
労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置
(1)労働者の労働日ごとの始業・ 終業時刻を確認し、これを記録すること。
(2)始業・終業時刻を確認し、記録する方法は、原則として次のいずれかの方法によること。
ア 使用者が、自ら現認することにより確認し、適正に記録すること。
イ タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として確認し、適正に記録すること。
(3)自己申告制によりこれを行わざるを得ない場合、次の措置を講ずること。
ア) 自己申告制の対象となる労働者に対して、労働時間の実態を正しく記録し、適正に自己申告を行うことなどについて十分な説明を行うこと。
イ) 実際に労働時間を管理する者に対して、自己申告制の適正な運用を含め、講ずべき措置について十分な説明を行うこと。
ウ) 自己申告により把握した労働時間が実際の労働時間と合致しているかの実態調査を実施し、所要の労働時間の補正をすること。入退場記録やパソコンの使用記録などのデータと、自己申告された労働時間との乖離が著しいときには、実態調査を実施し、必要に応じて労働時間の補正をすること。
エ) 自己申告した労働時間を超えている時間について、その理由等を報告させ、報告が適正に行われているか確認すること。その際、使用者の指揮命令下に置かれていたと認められる時間については、労働時間として扱わなければならない。
オ) 自己申告制は、労働者による適正な申告を前提として成り立つものである。このため、使用者は、自己申告できる時間外労働時間に上限を設け、それを超える申告を認めない等、労働時間の適正な申告を阻害する措置を講じてはならない。また、事業場の措置が、労働者の労働時間の適正な申告を阻害する要因となっていないか確認し、当該している場合は、改善のための措置を講ずること。
(4)賃金台帳の適正な調製
労働者ごとに、労働日数、労働時間数、休日労働時間数、時間外労働時間数、深夜労働時間数などの事項を適正に記入しなければならない。
(5)労働時間の記録に関する書類の保存
出勤簿やタイムカード等の労働時間の記録に関する書類について、3年間保存しなければならない。
(6)労働時間を管理する者の職務
労務管理を行う責任者は、労働時間の適正な把握等労働時間管理を行い、労働時間管理上の問題点の把握及びその解消を図ること。
(7)労働時間等設定改善委員会等の活用
必要に応じ労働時間等設定改善委員会等の労使協議組織を活用し、労働時間管理の現状を把握の上、労働時間管理上の問題点及びその解消策等の検討を行うこと。
労働時間とは
ガイドラインでは、「労働時間とは従業員が使用者の指揮・命令下に置かれている時間」と定義されています。また、使用者の明示又は黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は労働時間に当たるとされており、次のアからウのような時間は、労働時間として扱わなければなりません。
ア) 使用者の指示により、就業を命じられた業務に必要な準備行為(着用を義務付けられた所定の服装への着替え等)や業務終了後の業務に関連した後始末(清掃等)を事業場内において行った時間
イ) 使用者の指示があった場合には即時に業務に従事することを求められており、労働から離れることが保障されていない状態で待機等している時間(いわゆる「手待時間」)
ウ) 参加することが業務上義務づけられている研修・教育訓練の受講や、使用者の指示により業務に必要な学習等を行っていた時間
労働時間には「法定労働時間」と「所定労働時間」の2種類があります。
法定労働時間
労働基準法では、「休憩時間を除いて1日8時間・1週間で40時間以内の労働」と規定しています。正社員だけではなく、アルバイトやパート社員にも適用されます。
所定労働時間
雇用契約上定められた労働時間(休憩時間を除く始業から終業までの時間)をいいます。就業規則や雇用契約書に所定労働時間は記載します。
休憩時間とは
労働時間の途中に与えられる労働から解放された時間を指します。したがって、休憩時間は労働時間には含まれない。労働基準法では「労働時間が6時間を超える場合は、少なくとも45分」「8時間を超える場合は、少なくとも1時間」の休憩時間が必要とされています。また、休憩時間は「労働時間の途中」に与えなければなりません。
36協定とは
労働基準法の定める法定労働時間や時間外労働に関する労使協定のことで、企業と従業員の間で締結するものです。これが結ばれていない状態で残業や休日出勤を命じた場合は労働基準法違反となり、企業に対し6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されます。
36協定により延長できる時間数を遵守することは当然です。しかし、延長できる時間数を超えて労働しているのに、これをいかにも守っているように記録することが、慣習的に行われている場合は違反にみなされる可能性があります。
以上