case011 うつ病による休職中の従業者の自殺は会社の責任になるか?
Q:相談内容
うつ病による休職中の従業者の自殺は会社の責任になりますか?
A:結論
うつ病による自殺は会社の責任を問われる可能性があります。
自殺された方が仕事上どのような経緯でうつ病にり患されたのかによりますが、たとえば、長時間労働の結果うつ病にかかり自殺したケース(いわゆる「電通事件」)において、最高裁(最高裁判決平成12年3月24日)は以下のように判断し、会社に対する損害賠償責任を認めています。
すなわち、使用者は、その雇用する労働者に従事させる業務を定めてこれを管理するに際し、業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことがないよう注意する義務を負っており、本事件において、使用者はその注意義務を怠ったとして損害賠償責任を認めました。
また、真面目で完璧主義、責任感が強いといったうつ病親和性が、個性の多様さとして通常想定される範囲を外れるものでない限り、その性格を賠償額の算定に斟酌すべきではないとし、自殺者の性格を考慮した損害賠償の減額を認めませんでした。
このように会社は社員に対し「業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことがないよう注意する義務」(これを「安全配慮義務」といいます。)を負っています。ですので、今回の場合においても自殺された方が仕事上のことでうつ病になり自殺にまで追い込まれてしまったのであれば、その方の両親が会社に対し損害賠償請求をすることは十分に可能であると考えられます。
また、休職中であっても、仕事上の理由でうつ病にり患していた場合は、会社に対する損害賠償責任は免責されません。
<ご参考>
労災は「業務起因性があるか」から判断されます。
安全配慮義務違反に基づく損害賠償は、会社側の安全配慮義務及び同義務について故意過失により怠ったこと、これにより損害が発生し損害と義務違反の間に因果関係が認められることが必要です。つまり、労災が認定される場合は、会社側が有責の場合に限られるものではありません。
業務による心理的負荷によって精神障害を発症した人が自殺を図った場合は、精神障害によって、正常な認識や行為選定能力、自殺行為を思いとどまる精神的な抑制力が著しく阻害されている状態に陥ったもの(故意の欠如)と推定され、原則としてその死亡は労災と認定されます。
以上